火山がなた豆に最適な土壌をつくった
火山がなた豆に最適な土壌をつくった
まるで脇差のような巨大なさやを持つ豆「なた豆」。むせかえるような緑の匂いの中、天に向かってぐんぐんと伸びるなた豆畑に立つと、その自然のエネルギーに圧倒されます。鹿児島の大地の力をぎゅっと凝縮した植物、それがなた豆なのです。
なた豆は、鹿児島県で古くから生活に密着した雑穀として親しまれてきました。人々は家の庭の片隅でなた豆を栽培し、その若いさやを漬け物にして食していたといいます。なぜ鹿児島でなた豆が広く栽培されてきたのか、その理由は鹿児島県に数多く点在する活火山にあります。なた豆が大きく成長するには、十分なミネラル分を必要としますが、火山活動によって噴出された溶岩や火山灰といった堆積物には豊富なミネラルが含まれています。
火山の噴火によって吐き出された岩石は、太陽の熱や温度変化によってやがてボロボロになり、長い時間をかけて粘土化、有機物と混ざり合って土壌が形成されます。また、一部のミネラルは地下水に溶け込みます。
この豊富なミネラルを含んだ土と水がある鹿児島だからこそ、なた豆がよく育ち、人々の生活になた豆が利用される環境が整ったのです。
なた豆を巨大に育てるシラス台地
なた豆を巨大に育てるシラス台地
鹿児島県の方言では、火山灰や白っぽい砂を総称して「シラス」と呼びます。このシラスによって形成されたのがシラス台地ですが、鹿児島県本土の半分以上をこのシラス台地が占めているのです。シラス台地は、火山の噴出物でできていますから、カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛などミネラルが豊富に含まれています。また水はけがいいことも特徴としてあげられます。稲作にはあまり向きませんが、鹿児島特産のサツマイモや桜島ダイコンなどの農作物の栽培には大変適しています。
なた豆もそのひとつ。シラス台地のミネラルを十分に吸収して、さやの大きさが30~50cm、ときには70cmまで成長するのは、鹿児島の大地の恵みがあってこそなのです。