番町オーラルサージェリー&スキャニング歯科医院院長・元長崎大学歯学部付属病院講師・歯学博士 伊藤 道一郎先生
長崎大学歯学部卒業、同大学大学院博士課程終了後、2005年まで同大歯学部付属病院に勤務。口腔ガンや蓄膿症などの手術を担当されました。退職後、東京の歯科クリニックの勤務を経て、自分の求める医療を追求したいとの想いから、番町に歯科医院を開業。歯性上顎洞炎の治療になた豆を応用し、その成果を学会で発表するなど、なた豆への関わりも深い伊藤先生。そんな伊藤先生にご自身の経歴やなた豆についてのお話を伺いました。
先生の専門を教えてください
先生の専門を教えてください
専門は口腔外科です。今は抜歯などの小手術・インプラントなどの治療を多く手掛けています。大学病院を出た後に小宮山彌太郎先生に師事し、インプラントの専門知識および歯科医療に臨む考え方を教えていただきました。そこで学んだことと、外科手術の執刀経験が現在とても活きています。おかげさまで当院は他院で難しいと判断された患者さんの相談の場になっています。
先生が治療にあたり、大切にしていることはなんでしょうか?
先生が治療にあたり、大切にしていることはなんでしょうか?
患者さんを自分の家族だと思って治療にあたっています。自分の家族に対して、術後の見た目だけを重視した噛みあわせを考えない治療を施したり、後先考えず歯をけずったりといった酷い治療はできないでしょう?患者さんに歯の専門知識がないからと言って、患者さんを騙すような治療は論外です。基本的な歯の知識がないと、自身の症状やこれから施す治療について理解できませんから、治療する前に、まずは歯およびお口の中の基本的なことについて話をします。その後に、患者さんの症状や施す治療について丁寧に説明をするようにしています。
なた豆との出会いについて教えてください
なた豆との出会いについて教えてください
大学病院で、歯が原因で引き起こされる「歯性上顎洞炎」(膿をともなうものを蓄膿症)の治療にも携わっていたのですが、そのときの患者さんに「なた豆のお茶で症状が軽減した」と、教えられました。それが私となた豆の出会いです。はじめ話を聞いたときは「民間療法の一つにすぎないだろう」と適当に流したのですが、その方があまりに熱心にお話しされるので、私もだんだん気になってきまして、最終的にはなた豆の生産地に問い合わせの電話を入れていました。
その後、手当たり次第論文などを集め、なた豆について調査しました。
初期の調査でなた豆に膿取り作用があることはわかっていたので、なた豆の成分に排膿作用のあるカナバニンが含まれていることにはさして驚きませんでした。 私が特に気になったのは免疫力を高めるコンカナバニンという成分がなた豆に含まれていたことです。当時私は口腔ガンの治療にも携わっていたのですが、ガンの患者さんの免疫力検査の項目に「コンカナバニン」という項目がありました。この成分がなた豆に含まれていると知ったときは驚きましたね。
治療の中でなた豆をどのように活用されているのでしょうか?
治療の中でなた豆をどのように活用されているのでしょうか?
大学病院で働いていた際、「歯性上顎洞炎」の手術を拒否なさった患者さんの中から希望者を募り、なた豆茶を毎日約1リットルずつ飲んでもらう検証をしました。その結果、12人の内10人が、早い人だと2ヶ月、平均で4.7ヶ月後には抜歯後の傷口がふさがって患部の回復がみられたのです。その結果に患者さんはもちろん、私たち医師も驚きを隠せませんでした。
この結果は「歯性上顎洞炎治療におけるなた豆茶の使用経験」としてまとめ2002年の学会で発表しました。それ以来、「蓄膿症」「歯性上顎洞炎」の患者さんにはなた豆茶をお勧めしていますね。
また、歯の治療ではないですが、患者さんの中で鼻炎やアトピー、原因不明の炎症などでお悩みの方にもなた豆茶をお勧めしています。うちのクリニックの医師のお子様も皮膚炎で悩んでいましたが、なた豆茶を愛飲するようになってから、症状が軽くなったそうです。
今後のなた豆に期待することはありますか?
最後に
今後のなた豆に期待することはありますか?
なた豆の効能の科学的エビデンスが世間にもっと広まっていってほしいですね。なた豆というと、まだちょっと民間療法のイメージが強いように感じます。もっとインパクトのある基礎実験および臨床データが発表されればより多くの皆さんに広まっていくのかな、と思います。
また、他地域産のなた豆と薩摩産のなた豆のどこが違うのか比較してデータで示すことが必要かもしれません。以前、知り合いの医師から「自身の患者さんになた豆茶を飲んでもらったけど効果が出なかった」という報告が来ることがあったのですが、よくよく聞いてみると、産地が不明のなた豆茶を飲ませていることがわかりました。最近はテレビなどの影響でなた豆の知名度が上がったこともあり、色々ななた豆製品が入手しやすくなっています。それはそれでよいことなのですが、粗悪品も多く出回っているように思います。私が研究しデータを取ったのはあくまで「薩摩産」のなた豆についてなので、その辺りは正しいアピールの必要性を感じますね。正しい認識のもとで、より多くの皆さんに広まってほしいと思っています。